七十二候は、自然の変化を細やかに表現した伝統的な季節のリズムです。一年を72の細やかな時期に分け、それぞれに独特の美しい名前が付けられています。
これにより、私たちの暮らしと自然とのつながりを、より深く感じることができます。
「72の便り」は、七十二候をテーマに、季節の移ろいを丁寧に紡いでいくシリーズです。日本の美しい四季を感じながら、日々の暮らしに寄り添う瞬間をお届けします。

1/25~1/29頃の七十二候は「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」。
一年で最も寒さが厳しい時季。
沢を流れる水さえも、芯まで凍りつき、動きを止める頃です。山あいの小さな流れは音を失い、静まり返った景色が冬の深まりをはっきりと伝えてきます。
水が凍るという現象は、単なる冷え込みではありません。
ゆっくりと、確実に、外界からの刺激を遮断し、内側に力を閉じ込める自然の営みです。
地表は硬く、空気は張り詰め、草木の変化もほとんど見られません。
けれどその水の下では、次の季節へ向かう準備が静かに進められています。
冬の沢は、多くを語りません。
ただ、動かないことで、守るべきものを守り、失うべきでないものを保ち続けています。
忙しさの中にいると、「何も起きていない時間」は無駄に思えるかもしれません。しかし、水沢腹堅の頃が教えてくれるのは、動かない時間こそが、次の動きを支えているという事実です。
凍てつく沢の静けさは、やがて訪れる解氷のための前段階。
春は、すでに約束されています。
水沢腹堅のこの時季、外に答えを求めるのではなく、自分の内側を整え、静かに力を蓄えること。
それが、季節の流れにもっとも素直な過ごし方なのかもしれません。

もくじ
第七十候「款冬華 (ふきのはなさく)」 1/20~1/24頃
第七十一候「水沢腹堅 (さわみずこおりつめる)」 1/25~1/29頃
第七十二候「鶏始乳 (にわとりはじめてとやにつく)」1/30~2/3頃
バックナンバー

