七十二候は、自然の変化を細やかに表現した伝統的な季節のリズムです。一年を72の細やかな時期に分け、それぞれに独特の美しい名前が付けられています。これにより、私たちの暮らしと自然とのつながりを、より深く感じることができます。
「72の便り」は、七十二候をテーマに、季節の移ろいを丁寧に紡いでいくシリーズです。日本の美しい四季を感じながら、日々の暮らしに寄り添う瞬間をお届けします。

1/20~1/24頃の七十二候は「款冬華(ふきのはなさく)」。
厳しい寒さの底で、ふきのとうがそっと顔を出しはじめる頃です。雪の合間や霜柱の立つ土の中から、淡い緑の蕾が力強く芽吹く姿は、冬の終わりと春の気配を静かに告げています。
ふきのとうは、ほろ苦く、凛とした香りをもつ山の恵み。
その苦味は、冬の間に滞った身体を目覚めさせる味とも言われ、古くから季節の変わり目にいただく知恵として親しまれてきました。
天ぷらや和え物、刻んで味噌にするなど、ひと手間をかけることで、寒中に宿った自然の力を余すことなく取り入れることができます。
款冬華の頃は、派手な変化はまだ訪れません。空気は冷たく、景色も冬の名残を色濃く残しています。
それでも、足元に目を向ければ、確かに春は準備を始めています。
誰に急かされることもなく、自分のタイミングで芽吹くふきのとうの姿は、自然のリズムの確かさを静かに教えてくれます。
忙しさに追われる日々の中で、こうした小さな兆しに気づくことは簡単ではありません。
しかし、ほんの一瞬立ち止まり、季節の移ろいに意識を向けるだけで、心の緊張は少し緩み、視界がひらけていきます。
寒さの奥に潜む春のはじまり。
款冬華のこの時季、どうぞ足元の小さな芽吹きに目を留めながら、静かに、次の季節を迎える準備の時間を味わってみてください。

もくじ
第七十候「款冬華 (ふきのはなさく)」 1/20~1/24頃
第七十一候「水沢腹堅 (さわみずこおりつめる)」 1/25~1/29頃
第七十二候「鶏始乳 (にわとりはじめてとやにつく)」1/30~2/3頃
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