七十二候は、自然の変化を細やかに表現した伝統的な季節のリズムです。一年を72の細やかな時期に分け、それぞれに独特の美しい名前が付けられています。
これにより、私たちの暮らしと自然とのつながりを、より深く感じることができます。
「72の便り」は、七十二候をテーマに、季節の移ろいを丁寧に紡いでいくシリーズです。日本の美しい四季を感じながら、日々の暮らしに寄り添う瞬間をお届けします。

4/4~4/8頃の七十二候は、第十三候「玄鳥至(つばめきたる)」。
つばめが南から渡ってくる頃、という意味です。
春の訪れを知らせるものとして、花はよく目に留まります。けれど、季節は咲くものだけで進んでいくわけではありません。空を横切る小さな影や、軒先の気配のような、見逃してしまいそうな変化によっても、春は確かに深まっていきます。
「玄鳥」とは、つばめのこと。
黒く細い翼で、すっと空を切るように飛ぶその姿は、春の空によく似合います。ひらひらと舞うというより、迷いなく行き先を知っているように飛んでいく。その軽やかさには、冬のあいだ張りつめていた景色をゆるめる力があるように思えます。
つばめは、人の暮らしから遠い場所ではなく、むしろすぐそばへやってくる鳥です。
軒先や店先、駅の近くや建物の端。人の出入りがある場所を選ぶようにして巣をつくり、そこで季節を過ごしていきます。自然の中だけではなく、日々の生活の延長に春を連れてきてくれるところに、つばめの印象的なところがあります。
遠くの山ではなく、旅先の景色でもなく、いつもの町に春が帰ってくる。
「玄鳥至」という言葉には、そんな親しさがあります。
枚方でも、空を見上げるのが少し心地よく感じられる頃です。駅へ向かう道や住宅街の軒先で、すばやく飛ぶつばめの姿に出会うことがあるかもしれません。
「玄鳥至」は、そんなふうに、暮らしのすぐそばに春が戻ってきたことを知らせる候です。

もくじ
第十二候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」3/30~4/3頃|春分・末候
第十一候「桜始開(さくらはじめてひらく)」3/25~3/29頃|春分・次候
第十候「雀始巣(すずめはじめてすくう)」 3/20~3/24頃
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