七十二候は、自然の変化を細やかに表現した伝統的な季節のリズムです。一年を72の細やかな時期に分け、それぞれに独特の美しい名前が付けられています。
これにより、私たちの暮らしと自然とのつながりを、より深く感じることができます。
「72の便り」は、七十二候をテーマに、季節の移ろいを丁寧に紡いでいくシリーズです。日本の美しい四季を感じながら、日々の暮らしに寄り添う瞬間をお届けします。

4/14~4/19頃の七十二候は、第十五候「虹始見(にじはじめてあらわる)」。
虹が見え始める頃、という意味です。
もちろん、冬のあいだに虹がまったく出ないわけではありません。
けれど昔の人は、寒い季節には見かけにくかった虹が、春が深まるにつれてふたたび空にあらわれることを、この言葉で表しました。
七十二候には、これと対になるように、晩秋の「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」という候もあります。
虹が消えるのではなく、季節によって見え方や出会いやすさが変わっていく。その感覚を、昔の人は「始見」という言葉に込めたのでしょう。
虹は、空気中の細かな水滴に、太陽の光が差し込むことで見える自然現象です。
一般には七色といわれ、外側から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順に並びます。ただ、色の境目がきっぱり分かれているわけではなく、本当は赤から紫までがなめらかにつながっています。
虹がまっすぐではなく、ゆるやかな弧を描いて見えるのは、雨粒の中で光が曲がり、反射し、見る人の目に届く角度がそろうためです。
空に描かれた線というより、光と水がつくる一瞬のかたち、といった方が近いのかもしれません。
また、虹には昔から、さまざまな言い伝えも重ねられてきました。
虹の根元には宝が眠っているとか、虹を見ると幸せになれるとか、空と地上をつなぐ橋のようなものだとか。
ほんとうかどうかを確かめることはできなくても、そうした話が今も語り継がれているのは、虹がただの気象現象としてではなく、人の心に何か特別なものを感じさせてきたからでしょう。
たしかに虹は、いつもそこにあるものではありません。
雨上がりの空にふとあらわれ、気づいたときにはもう薄れていることもあります。
見つけようとして探すというより、偶然出会えたときにだけ、その存在に気づく。そんな短さまで含めて、虹にはどこか不思議な印象があります。
昔の人がその向こうに宝や幸運を思い描いたのも、少しわかる気がします。
枚方でも、日差しの明るさが少しずつ増し、雨のあとの空気に春のぬくもりが混じってくる頃です。
忙しい毎日のなかでは、空を見上げることさえ後回しになりがちですが、ふと目を向けた先に虹が立っていたら、それは春がまたひとつ先へ進んだ合図なのかもしれません。

もくじ
第十四候「鴻雁北(こうがんかえる)」4/9~4/13頃|清明・次候
第十三候「玄鳥至(つばめきたる)」4/4~4/8頃|清明・初候
第十二候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」3/30~4/3頃|春分・末候
バックナンバー

