
「あの日、あのとき、枚方で」は、「枚方で過ごした小さな日常の物語」をコンセプトに、大阪府枚方市での思い出や街の風景、人とのささやかな関わりを切り取ったエッセイ動画です。読むたびに、あのときの風景や気持ちがそっとよみがえる、そんなやさしい時間をお届けします。

あの日のことを思い出すと、今でも胸の奥が少し切なくなります。舞台は中学時代。友達のAちゃんと登校するために待ち合わせ場所へ向かうと、そこにはなぜかSさんが立っていました。そこで突然、AちゃんとMくんが付き合っていると告げられ、驚きと戸惑いが一度に押し寄せてきました。
夜遅くまで長電話をするほど仲が良かったMくんに抱いていた気持ちは、恥ずかしさとともに胸の奥へしまい込むしかありませんでした。
今回は、その初恋の記憶を振り返りながら、あのとき言えなかった「好き」の思いを静かに綴ります。
ぜひ最後までお楽しみください。
中学生の私とMくん

中学生の頃、私には仲のいい男の子・Mくんがいました。まだスマホもガラケーも持っていなかった時代で、夜になると家の電話で長く話していたのを覚えています。
当時の私は自分の気持ちに気づいていませんでしたが、振り返ってみればきっとMくんが好きだったのだと思います。もしかすると、Mくんも同じように私を思ってくれていたのかもしれません。
突然の知らせと、別れ

ある朝、いつものように仲良しのAちゃんと登校するために待ち合わせ場所へ向かいました。すると、なぜかそこにはSさんが立っていました。
「一緒に行ってもいい?」と声をかけられ、私たちは3人で歩き始めました。
しばらくして、Sさんが唐突に言いました。
「そういえば、AちゃんってMくんと付き合っているんだよね。」

私はショックを受けました。Mくんとは毎日のように電話をしていたし、Aちゃんとは毎朝一緒に登校していた。大好きな2人が付き合っていて、しかも私だけが知らされていなかったのです。
その後の会話や学校までの道のりは、不思議とまったく記憶に残っていません。

さらに1週間ほど経ったある朝、またSさんが待ち合わせ場所にいました。
そして今度は、「Aちゃん、Mくんと別れたんでしょう?」と告げられたのです。中学生の交際が短期間で終わることは珍しくありませんが、大切な2人の出来事をまたもやSさん経由で知ることになり、複雑な気持ちが残りました。
あのとき、何が起こったのだろう?

大人になってから、私はひとつの仮説を立てました。――あれは、3人が立てた「計画」だったのではないか。
私がMくんへの気持ちを曖昧にしていたから、わざとお芝居をして、揺さぶったのではないか。そう考えると、普段は待ち合わせ場所にいないSさんが現れたことにも、説明がつきます。

それとも本当に、AちゃんとMくんが付き合っていて、私が気づかないから、Sさんが知らせてくれただけだったのか。今となっては確かめることはできません。
けれど、今でもふとMくんのことを思い出します。もしあの時、勇気を出して「好き」と伝えていたら、何かが違っていたのでしょうか。
そんな答えのない問いを胸に抱えながら、あの日の記憶は今も私の中で輝き続けています。
動画では、音楽とナレーションであの日のやり取りをお届けしています。ぜひご覧ください。
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制作:社会事業開発ACTION