※※※ 鋭意製作中 ※※※
【制作ノート】“占い”をこえて描いたもの——星奈さんに聞く、タロット制作の舞台裏

雨音に包まれる6月のオンラインギャラリー「紫陽花に降る、しずかな雨の朝」。
その展示のなかで、静かに、でも確かに注目を集めているのが——星奈さんが密かに描き続けていたタロットカードの存在です。
今回初めて公表されるこのシリーズ。
カードに描かれているのはすべて女性たち。恋人のカードも女性同士の姿で構成され、儚く、美しい、静謐な世界が広がっています。
本記事では、そんな「星奈タロット」がどのように生まれたのか、その制作背景を伺いました。

なぜタロットカードを描こうと思ったのか?
星奈:
最初は完全に個人的な衝動でした。
「意味を持った女性像を描きたい」という気持ちがずっとあって、それに一番しっくりきたのがタロットカードだったんです。
占いの道具というよりも、「象徴」を絵に落とし込むことで、言葉にできない感情や空気を閉じ込めたい、という感覚に近いです。
タロットって、一枚一枚がまるで物語のように深くて、女性たちの内面を映し出す鏡みたいだなと思って。

タロットならではの構造と難しさについて
星奈:
イラストを描く前に、改めてカードの意味や構造を調べましたが、本当に奥が深い。
図像の意味や配置、背景に何を描くか、その象徴がどんな作用を持つか……表面的なビジュアルだけでなく、「なぜそこにそれがあるのか」という必然性が求められるんです。
とくにタロットは、描かれている要素ひとつひとつが解釈に影響を与えるので、自由に描けるようでいて、とても制約のある世界だと感じました。
でも、その中で自分らしさや美しさを探していく作業が、逆にすごく面白かったです。

最初に描いたカード、その制作裏話
星奈:
最初に描いたのは、0番の「愚者」です。
タロットカードの始まりを意味するカードで、無垢で、自由で、どこか危うい存在。このカードから描き始めることは、自分自身のタロット制作の“旅のはじまり”にも重なりました。
最初のラフでは、構図がしっくりこなくて、何度も描き直しました。「愚者」は軽やかであるべきだけど、私の中の軽やかさは、無垢というよりもどこか空虚に近い。そんな感覚を絵に落とし込むのが難しくて——。
結果として、無表情に近い顔や、余白を大きく取った背景で、「これから何かが始まりそうな静けさ」を表現しました。

描きながら気づいた“自分らしさ”
星奈:
描きながら、「私は女性しか描かないんだ」と改めて思いました。このシリーズでも、恋人のカードや力のカードなど、すべて女性だけを登場させています。
どこか儚さや静けさがある女性たち。そこに時折差し込む、ちょっとした違和感や不穏さ。
自分の表現したい世界は、「きれい」だけではないということを、タロットを通して再確認しました。

今後の展開と、読者へのメッセージ
星奈:
タロットカードのシリーズは、まだまだ制作途中です。完成には時間がかかるけれど、ギャラリーで少しずつ公開していくつもりです。
毎月変わる「星座の擬人化」シリーズや、「今日の運勢」のイラストとはまた違う、タロットならではの構造と物語性のある世界を感じてもらえたら嬉しいです。
どうかゆっくり、1枚ずつ眺めてもらえたらと思います。

星奈さんの描く世界は、静かで、でも強い。カードに描かれた女性たちは、誰かの感情のひだにそっと寄り添うような、不思議な温度を持っています。
物語の始まりは、0番の「愚者」。これから彼女たちがどんな旅をしていくのか、静かに見守っていきたいと思います。


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