枚方で叶える「ちょっとだけ」丁寧な暮らし

あの日、あのとき、枚方で

お母さんを亡くしたばかりのNちゃんと観た『アルマゲドン』。映画の音楽が流れるたびに、胸の奥がきゅっと痛む。

薄暗い映画館に並ぶ赤い座席の中央に「あの日、あのとき、枚方で」のロゴ。クリックでNちゃんと観たアルマゲドンの思い出をYouTubeで再生。

「あの日、あのとき、枚方で」は、「枚方で過ごした小さな日常の物語」をコンセプトに、大阪府枚方市での思い出や街の風景、人とのささやかな関わりを切り取ったエッセイ番組です。

暗闇の映画館で映写機のレンズから光がスクリーンに映し出される。Nちゃんと観た映画『アルマゲドン』の記憶を思い出させる象徴的なイメージ。

今回お届けするのは、お母さんを亡くしたばかりの友人・Nちゃんと観た映画『アルマゲドン』をめぐる物語です。

ベリーショートが似合う笑顔の彼女と、京都まで電車に揺られて観に行ったあの日。今でも、映画の音楽が流れるたびに、あのときのことを思い出しては、胸の奥がきゅっと痛みます。

誰にでもある“別れ”の記憶。ぜひ最後までご覧ください。

Nちゃんの文字と笑顔を、今もはっきり覚えている

オレンジのユニフォームを着た女の子がグローブをはめ、ボールを投げようとしている。中学生のNちゃんをイメージした元気で明るい青春の一コマ。

中学生の頃、仲のよかったNちゃんのお母さんが亡くなった。その知らせを聞いたとき、胸の奥で何かが音を立てて崩れた気がした。

「死」という言葉が、ようやく現実の重さを持って迫ってきたのは、このときが初めてだった。

Nちゃんは、ベリーショートがよく似合う女の子で、いつも太陽みたいに明るい笑顔を見せてくれた。何度も手紙を交換し合い、彼女の書く文字を見るのが、楽しみになっていた。

Nちゃんの字は、角ばっていて、力強くて、そのまっすぐな線に、彼女らしさが滲んでいた。その字を見るたび、なんだか元気をもらえる気がした。

青空の下、太陽の光で反射するグローブのアップ。ボールを受け取ろうとする瞬間を捉え、Nちゃんの元気で明るい青春のイメージを象徴する。

Nちゃんと観た『アルマゲドン』は、涙の向こうに

黒い壁と床の映画館で、赤い座席と手すりが横に並ぶ。奥には非常口が見え、暗闇の中で映画館の静けさを感じる情景。

そんなNちゃんと私は、映画を観に行く約束をしていた。タイトルは『アルマゲドン』。親が命を差し出す場面があり、私は正直、迷った。Nちゃんがそれを観て平気だろうか――。

けれど、Nちゃんは迷わず言った。
「観たい」

当時の枚方には、まだ映画館がなかった。だから私たちは、電車に揺られて、京都の映画館へと向かった。

スクリーンの中で、世界が終わりを迎えようとする瞬間、お父さんの手が爆破スイッチを握る。お父さんの脳裏に、娘が幼かったときの思い出と、これからの未来が巡る。娘は地球で、事の顛末を見守っている。そしてーー。

二人とも泣いた。エンドロールの音楽だけが、静かに流れていた。

あの文字が、今も私の胸に残る

緩やかにカーブするアスファルトの道を走り去ろうとする白い車。左右には草や木が生え、奥には青い標識が見える。Nちゃんの引越しと別れのイメージを象徴する情景。

しばらくして、Nちゃんは家の事情で、滋賀に引っ越した。卒業まで一緒にいられなかったことが、心残りだった。

映画『アルマゲドン』の音楽を耳にすると、私はNちゃんの個性的な文字と、笑顔を思い出す。あの直角的で、カクカクした文字。もう手紙に何を書いていたのか、覚えてはいないけど。

あの日、Nちゃんと一緒に映画を観に行って、本当によかった。Nちゃんが今もあの個性的な文字で、どこかで元気に笑っていますように。

右手に山吹色の鉛筆を持ち、白い紙に文字を書く手元のアップ。中学生のNちゃんのカクカクした個性的な文字と、手紙交換の思い出を象徴するイメージ。

動画では、音楽とナレーションであの日のやり取りをお届けしています。ぜひご覧ください。

続きはYouTubeでお楽しみください

薄暗い映画館に並ぶ赤い座席の中央に「あの日、あのとき、枚方で」のロゴ。クリックでNちゃんと観たアルマゲドンの思い出をYouTubeで再生。

もくじアイコン(背景透過)

もくじ

お母さんを亡くしたばかりのNちゃんと観た『アルマゲドン』。映画の音楽が流れるたびに、胸の奥がきゅっと痛む。
同じ名前がつないだ友情。もう一人の「ひろみちゃん」との意外な場所での再会
あの日言えなかった「好き」。長電話をしていたMくんが、Aちゃんと付き合って……?
中学3年生の夏、進路の迷い。本当は苦手だった幼馴染のKちゃんが教えてくれた可能性。


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堀 寛未

堀 寛未

HORI HIROMI

大阪府枚方市出身。社会事業開発ACTION代表。ひらかたパークで宣伝広報として勤めたのち、2020年よりソーシャルビジネスに携わり、これまでライティングや、マーケティングなど、829本以上の動画講義をあげてきた。「枚方で叶えるちょっとだけ丁寧な暮らし」をコンセプトにしたローカルメディア「Re:HIRAKATA」を運営。

  1. あの日、あのとき、枚方で|Nちゃんと観たアルマゲドン篇

  2. ローカルメディアができるまでの100日間|DAY5 デザインの意図と意味

  3. お母さんを亡くしたばかりのNちゃんと観た『アルマゲドン』。映画の音楽が流れるたびに、胸の奥がきゅっと痛む。

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