
『ローカルメディアができるまでの100日間』は、枚方市のローカルメディア「Re:HIRAKATA」が形になっていく姿をお届けするドキュメンタリー番組です。

▲社会事業開発ACTION・代表の堀寛未
前回は、各特集ロゴの制作を通じて、「枚方の記憶や、情景を、どうビジュアルに込めるか」というテーマについて、社会事業開発ACTION代表の堀寛未(ほり・ひろみ。以下、堀)が語り、Canva Proの制作工程をお見せしました。
そして5日目となる今回は、いよいよローカルメディアの“顔”となるWordPressテーマを決定します。
ブランドの世界観を、デザインでどう表現するか――。
コンサルティングのプロである堀が、数あるテーマの中から「TCD」を選んだ理由、そして最終的に決定したテーマの狙いなど、戦略的なデザイン思考のプロセスを語ります。
美しいサイトには、必ず意思がある。その裏側を、どうぞ最後までご覧ください。
デザインに“正解”はない。ただ、意図はある。

▲大阪モノレールから見た淀川。枚方にも続いている。
Re:HIRAKATAのサイトデザインを決めるにあたって、堀は「目的」から逆算することを重視しました。
ただ美しく見せるだけではなく、何を伝え、誰の心に届かせたいのかを明確にした上で要素を選ぶ──その姿勢が出発点になる、と堀は言います。
堀:
「10年ぶりに地元・枚方市へ戻ってきたとき、変わりゆく風景を見て“この町の魅力を形に残したい”と強く感じました。」
変わり続ける町並みや、記憶に残る場所たちをただ記録するのではなく、物語として未来へ手渡すためのメディアであること。
その明確な目的があるからこそ、デザインの選択肢が絞られていきます。

堀:
「ローカルメディアを立ち上げる上で一番大事にしたのは“印象”です。初めて訪れた方が『なんかすごいぞ』と思ってくれること、そしてそこから何度も訪れてもらえるようにしたい。暮らしの中で自然と読み続ける習慣の一部になってほしいと思っています。」
サイトデザインの美しさは、そのためのインパクト。
そして、美しさは偶然に生まれるものではなく、戦略の積み重ねから生まれると、堀は考えています。
デザインに“正解”はない。けど、“意図のないデザイン”は避ける──その基準が常に働いている、と語っていました。
堀:
「Webサイトは『見る』だけのものではなく、『感じる』ものだと思います。写真一枚、余白ひとつにも、意味を持たせていく。正解は一つではないけれど、意図を持って設計されたものだけが、結果として人の心に残るデザインになると信じています。」
TCDがくれた“物語を語る力”

TCDのテーマは、いくつもの候補を検討した末に最終的に選ばれました。その決定理由は、なんだったのでしょうか。
堀:
「TCDのテーマは、“見せたい世界観”を正しく翻訳してくれます。写真と文章の呼吸が揃うんです。ローカルメディアは、人の体温を伝える仕事なので、温度を失わないデザインが必要でした。」
Re:HIRAKATAでは、ただ美しいだけのサイトではなく、読む人の心に残ることを重視しています。そのため、テーマ選びは戦略そのものであり、UXやUI、視覚心理を踏まえた設計が不可欠。
文字や写真の配置、余白、スクロールの動きひとつひとつに意図を持たせ、初めて訪れた読者にも「このサイトは信頼できる」と感じてもらえることを目指しています。
堀:
「TCDの魅力は、単におしゃれなだけではなく、見ている方への説得力や、記憶に残る印象を、意識して作られているところです。毎月、新しいデザインが追加され、バージョンアップも日々行われているので、安心して使えます。」
例えば、ロード画面。
Re:HIRAKATAにアクセスすると、まずロゴが表示され、ゆっくりとフェードアウトします。その後、画面いっぱいにトップページが表示され、ユーザーを自然にサイトの世界観へ引き込みます。
ヘッダーコンテンツは3分割されていて、最大面積のスライダー部分では、動画アイキャッチが展開。このように、動きのある演出により、読者の興味を引きつけ、長時間滞在してもらいやすい設計になっているのです。
さらにスクロールすると、手前のテキスト要素と、奥の背景要素でスクロール速度に差をつけるパララックス効果が発生します。
これにより奥行きが生まれ、視覚的な体験が向上すると同時に、サイトへの没入感が高まるのです。
堀:
「初めてサイトを訪れた方が『なんかすごいぞ』と思い、そして何度も訪れて更新が楽しみになる。暮らしの中で、自然に読まれるメディアになることが目標だったので、TCDのテーマは、それを叶えてくれる最適な選択肢でした。」
美しいサイトには、意思がある。

公開後、サイトを訪れた人々からは「読む前から世界観が伝わる」「こういうサイトを待っていた」という声が届きました。
それは偶然の産物ではなく、堀の戦略的なデザイン思考と、細部へのこだわりの積み重ねの結果なのです。

堀:
「デザインは“感情の設計”です。写真一枚、余白ひとつにも意味があります。ローカルメディアは、まちの顔ですから、そこに宿る意思を届けたい。訪れる人が自然と物語に入り込めるよう、すべての要素に意図を持たせています」
画面の構図や色の選び方、文字の配置といった細部の調整は、すべて連動してRe:HIRAKATA全体の印象を形作っています。
例えば、記事詳細画面の背景は、デフォルトでは薄いグレーですが、サイトの世界観に合わせて、白を指定しています。画像下のキャプションも、元の黒テキスト・通常サイズから、薄いグレー・小サイズに変更し、本文との階層差をプラス。
他にも、細かな工夫があるのだとか。

堀:
「文字や画像が詰まりすぎないように余白を意識しました。呼吸が生まれることで、全体にゆとりと、上品さが出るんです。こうした細かい工夫を積み重ねることで、訪問者が自然に読み進められる、落ち着いた印象のサイトに仕上がったと思います。」
静かに語る堀の姿は、まるで職人のようでした。
美しいサイトには必ず意思があり、それを可視化することこそが、デザインという仕事の本質であることを、改めて感じさせられます。
動画では、今回採用したCODE.だけでなく、魅力的だと感じた他のTCDテーマも、どの部分に注目して比較したのか、なぜ最終的にCODE.を選んだのか──その意図や思考プロセスまで、堀が丁寧に語っています。ぜひご覧ください。
続きはYouTubeでお楽しみください


もくじ
【DAY1】ローカルメデイア、はじめます ―ローカルメディアができるまでの100日間
【DAY2】名前が生まれるとき、夢が形となる ―ローカルメディアができるまでの100日間
【DAY3】ノートに描いた枚方の記憶と未来 ―ローカルメディアができるまでの100日間
【DAY4】一つひとつのロゴに宿る想い。Canvaで枚方への愛情をデザインに込めて。
【DAY5】美しいサイトには、意思がある。WordPress×TCDで描く、“説得力”のあるデザイン戦略。
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撮影:堀寛未