七十二候は、自然の変化を細やかに表現した伝統的な季節のリズムです。一年を72の細やかな時期に分け、それぞれに独特の美しい名前が付けられています。
これにより、私たちの暮らしと自然とのつながりを、より深く感じることができます。
「72の便り」は、七十二候をテーマに、季節の移ろいを丁寧に紡いでいくシリーズです。日本の美しい四季を感じながら、日々の暮らしに寄り添う瞬間をお届けします。

2/9~2/13頃の七十二候は、第二候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」。
鶯が鳴き始める頃、と言われますが、ここで思い浮かぶのは、完璧な「ホーホケキョ」ではありません。
淀川の河川敷を歩いていると、時折、どこか頼りない声が聞こえてきます。
「ホ…ホケ……キョ?」
途中で途切れたり、調子を外したり。どう聞いても、練習中です。
上手とは言えない。むしろ、下手すぎて思わず笑ってしまうこともある。
けれど、その声には不思議なあたたかさがあります。
黄鶯睍睆が示しているのは、完成された春ではありません。
まだ寒さが残る中で、鶯が試しに声を出し、何度も失敗しながら、自分の鳴き方を探している時間です。
自然は、この段階で「完璧」を求めません。
鳴いてみる。違ったら、また鳴く。
それだけです。
人もまた、この時季は同じところに立っています。
考えはまとまりきらない。言葉もうまく出てこない。それでも、内側に芽生えたものが、少しずつ外に漏れ始める。
淀川の河川敷に響く、あの少し不格好な鳴き声。
あれは、自然からの励ましです。「そのままでいい。まずは、鳴いてみなさい」と。

もくじ
第七十一候「水沢腹堅 (さわみずこおりつめる)」 1/25~1/29頃
第七十二候「鶏始乳 (にわとりはじめてとやにつく)」1/30~2/3頃
第一候「東風解凍 (はるかぜこおりをとく)」2/4~2/8頃
バックナンバー

