※※※ 鋭意製作中 ※※※
【インタビュー】静かな雨が語りかける——イラストレーター・星奈さんに聞く、6月のオンラインギャラリー「紫陽花に降る、しずかな雨の朝」

2025年6月に公開されたオンラインギャラリー「紫陽花に降る、しずかな雨の朝」。
96点にもおよぶ作品は、どれも梅雨の空気をまとったような静謐な空気感と、見る人の心にそっと触れる繊細さを持っています。
この作品たちは、日々の「今日の運勢」や星座の擬人化イラストとしても展開され、さらに今回は未発表だったタロットカードの制作も初めて明かされました。
本展の中心にある想いと制作の舞台裏について、イラストレーター・星奈さんにお話をうかがいました。

――まず、5月の展示「月は唄い、星は夢見る」との違いについて教えてください。
星奈:
5月は、これまでの自分の制作の軌跡や変化を振り返るような展示でした。
まだスタイルが固まっていなかった頃の、力強い線や褐色の肌の女性、シンプルで柔らかな表現なども含めて、私の中のいろんな側面を見てもらえたと思います。
そこから6月になって、絵の世界がぐっと静かになったというか……。
今回は、何かを“見せる”というより、“感じてもらう”ことを大切にしました。

――6月の展示タイトルは「紫陽花に降る、しずかな雨の朝」。でも紫陽花そのものは描かれていないんですよね。
星奈:
はい、紫陽花はあえて描いていません。でも、梅雨といえば紫陽花、というくらい季節の象徴じゃないですか。
あの空気感、雨音、湿った朝の光……そういう“目に見えない空気”を感じてもらえるように、このタイトルをつけました。
雨が降ると、街から人が消えて、音も遠くなって。いつもと違う景色に出会うあの感じが、不気味で、でもどこか神秘的で。
そういう空気を絵にしたいと思ったんです。

――「今日の運勢」のアイキャッチは6月から毎日描き下ろしとのこと。制作のスタイルにも変化があったのですね。
星奈:
そうなんです。5月まではある程度まとめて描いて使いまわしていたんですけど、6月からは“その日の空気”を感じられるようにと、日替わりになりました。
まるで日記みたいな感じですね。
朝起きた時の空の色、気分、季節の音……そういうものを毎日の絵に込めています。

――星座の擬人化イラストも印象的でした。今月は傘を持った女性たちですね。
星奈:
6月のテーマに合わせて、星座たちにも傘を持たせています。全員に同じ傘を持たせるのではなくて、性格や雰囲気に合わせた傘にしたり、持ち方に違いがあったり。
そういう細部に「その星座らしさ」が出るようにしました。
この擬人化シリーズは毎月固定で、その月の空気感、まるで“星座に季節の服を着せる”ような感覚で、今後も続けていきたいと思っています。

――そして今回、タロットカードの制作を初めて公開されました。これは大きな発表ですね。
星奈:
はい、実は以前から構想はあったんですが、公にお話しするのは今回が初めてです。
タロットはカード一枚一枚に意味があって、その意味とどう向き合うか、どう描くかがとても奥深いです。カードの構造や象徴はそのままに、でも模写にはならないように、私らしさを出すことにもこだわりました。
不気味さ、神秘性、どこか甘美で目が離せない感じ——そういった空気感を大切にして描いています。
まだ全部は揃っていませんが、今後のギャラリーで少しずつ公開していけたらと思っています。

――最後に、今月の展示を通して、見る人にどんな気持ちを届けたいですか?
星奈:
静かな朝に、雨の音を聞いているときのような感覚。自分の気持ちにそっと耳を澄ませるような時間を過ごしてもらえたら嬉しいです。
絵は言葉じゃないから、受け取り方は自由でいい。
でももし何かがふっと心に触れたなら、それはきっと、同じ時間の空気を吸ってるということなんじゃないかな、って思っています。


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